医療機関側での医療安全・院内文書のリーガルチェックや医療訴訟対応

 弁護士渡邊涼平は、病院等の医療機関・医師の顧問、代理人として、以下のようなケースに対応しています。

☑ 医療安全対策
☑ 医療事故・介護事故(過失を争うケース,争わないケース)
☑ 患者・患者家族からのクレーム対応
☑ 医療機関・薬局・介護施設での未収金回収
☑ 院内規定や契約書等の文書のチェック
☑ 手術等に関する説明文書・同意文書のチェック
☑ 病院ウェブサイトの広告ガイドライン適合チェック
☑ 臨床研究・治験・患者の意思決定に関する倫理委員会対応

 また、医療機関において注意すべき問題等に関する研修・勉強会の講師もお受けしています。

「謝ったら負け」は本当か?

 医療に詳しくない弁護士は、医師から相談を受けた場合、「謝らないでください。」とだけアドバイスしがちです。反対に、患者さん側から相談を受けた場合に、「謝られたのであれば勝ち目がある」と判断しがちです。
 しかし、本当に「謝ったら負け」なのでしょうか。

 医師の方には常識だと思いますが、医療は、結果を保証するものではありません。また、治療結果を得るために、様々な合併症(検査あるいは治療に伴ってある確率で不可避に生じる病気や症状)をが生じることがあります。合併症は、医師の手技や治療過程に問題がなくとも生じてしまうものですから、それが生じてしまったとしても医師には責任はありません(不法行為の根拠たる「過失」がありません。)。そのため、法的な観点からいえば、患者さんが期待する結果が現れなかったり、合併症により患者さんが期待しない症状が現れたりしても、医師や病院が不法行為責任を負うことはありません(「説明義務違反」による不法行為責任という別の論点はありえますが、ここでは省きます。)。

 しかし、それでも、医師として手を尽くしたにもかかわらず、期待する結果が現れなかったり、合併症が生じてしまった場合には、医師は、プロフェッショナルとして、「患者さんが期待する結果が出せなくて申し訳ない」または「合併症が生じてしまい申し訳ない」と感じるのではないでしょうか。また、患者さんが気を落としている、別の症状に苦慮していることも十分に理解しているはずです。

 そのため、患者さんに期待する結果が現れなかったり、合併症が生じてしまった場合に、医師が「申し訳ない」という感情を抱くことも、それを患者さんやそのご家族に対して発露することも、自然なことです。裁判においても、以下の例のように、謝罪自体から責任を認めるということはしていません。

 また,原告らは,H看護師は,本件ROM運動によりBを骨折させてしまったことから,原告らに謝罪したと主張する。
 しかし,H看護師の謝罪は,骨折という診断結果が出たことに対するものと考えられ,本件ROM運動の態様に問題があったことを自認する趣旨とは考えがたい(現に,H看護師が謝罪した日の報告書においては,「骨折という結果」について謝罪する旨が記載されているにとどまっている…。)。したがって,H看護師の謝罪は,本件ROM運動によりBが骨折したことを推認させる事情とはいえない

福岡地裁平成25年11月1日判決(平22(ワ)709号 ・ 平22(ワ)6167号事件)Westlaw 2013WLJPCA11019001

 なお,原告らは,平成15年1月7日に,被告E医師が,原告Aに,リンデロンAの点眼中止について謝罪をしたこと,O医師がE医師がリンデロンを中止した点については疑問に思っている旨述べたことを被告E医師に過失があることの根拠として主張しているようである。しかし,被告E医師はその本人尋問において謝罪したのは不本意であったと述べていることのほか,謝罪の趣旨は明確でなく,診療行為に過失がないとしても,これによって想定外の結果が生じたことについて謝罪する趣旨であったということも当時の状況に照らし,あながち不合理ともいえないから,被告E医師がリンデロンAの点眼中止の判断につき謝罪をしたことをもって,被告E医師の治療行為に法律上の過失があったことを基礎付けるものとまではいえない。また,O医師の発言についても,それがどのような文脈で発言されたものかが不明であり,その発言の趣旨も明らかではなく,やはり被告E医師の治療行為に法律上の過失があったことを基礎付けるものとはいえない。

東京地裁平成20年2月20日判決(平17(ワ)26697号事件)Westlaw 2008WLJPCA02209003

 したがって、医師側の弁護士が医師に対し、「謝らないでください。」とだけ言うことは誤りですし、患者側の弁護士が患者さんに対し「謝られたのであれば勝ち目がある」と言うことも誤りです。

 こういったアドバイスは、いずれも医師がプロフェッショナルとして抱く「申し訳ない」という感情を抑え込ませ、かつ、患者さんからは不誠実な態度を取られたかのように見られてしまう点で、百害あって一利なしだと考えます。

 まずは、医療にかかわる弁護士が(医師側・患者側いずれであっても)、医療は医師と患者との信頼関係により成立するものであり、かつ、結果は保証されず、合併症が生じうるものであることを理解し、医師と患者とのコミュニケーションを害さないようにすべきです(当然ですが、理由なきクレームに対しては毅然とした対応を取る必要があります。)。

顧問契約は医師・病院の法務の健康診断

 もっとも、医師としても、「申し訳ないとは思うものの、裁判でどう評価されるか分からないから、どう表現したらよいだろうか」「責任はないと確信しているが、責任があると誤解されたらどうしよう」等と迷う場面が沢山あると思います。

 こういった迷いを払拭するためには、まず医療に理解のある弁護士にご相談いただきたいと思います。資料やご相談内容を踏まえて、訴訟においてどのように評価される可能性があるかについてまで含めた見通しをある程度お話できますし、また、患者さんとの面談・説明会においてどのように対応すべきかもアドバイスができます。

 さらに言えば、患者さんとの具体的トラブルが生じる前に、医療に理解のある弁護士と顧問契約を締結していただき、定期的に弁護士とコミュニケーションをとっていただき、医師・医療機関の定型文書や安全対策状況等について弁護士に把握してもらっておくのがベターだと考えます。

 弁護士は、よく「何か具体的なトラブルがあったときに相談する相手」と見られがちですが、具体的なトラブルが生じてからでは後手後手の対応にならざるを得ないことが多々あります。これは、身体の健康維持のためには定期的な健康診断が大切であり、病変が体に不調をきたすような状態になってからでは医師もやれることが限られてくる、というのと似ているのではないでしょうか。

 医療に理解のある弁護士と顧問契約を締結していただくことで、「法的トラブルのかかりつけ医」として弁護士を活用していただければと思います。

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