ご家族が認知症等によりお一人では社会生活を営むことが困難である場合には、ご家族の要望に応じ、後見申立て手続き等の代理や後見人へ就任することも行っています。
1.成年後見制度
成年後見制度は、認知症等により「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」方(=成年被後見人)について、ご家族や専門家が後見人となることで、成年被後見人が一人で判断することが困難な契約や金銭管理について、成年後見人が代わりに判断し、金銭の支出等を行うことができるようにする制度です。
成年後見人が選任されていれば、配偶者や親が認知症等によって通信販売や訪問販売による契約、場合によっては、投資の契約等の不要な契約をしてしまったりすることにより、財産が失われてしまうことを防ぎながら、成年被後見人にとって必要な契約については、成年後見人が判断をしながら進めることができます。
なお、「成年後見人を付けると,自分一人では何もできなくなるのではないか」と不安に思われる方もいらっしゃいますが、成年被後見人の日々の生活に要する買い物については、「日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」=成年後見人が取り消すことはできないとされていますので(民法9条)、日常生活が不便になることはありません。
中には、「家族でしっかり面倒をみているから、後見人を付ける必要はない」とお考えになる方もいらっしゃいますが、認知症の方の親や配偶者が亡くなられた際、すなわち、相続が発生した際には、成年後見人が付いていなければ相続手続きを進めることができません。
また、ご家族も相続人の一員である場合には、利益相反のためにご家族自身が成年後見人に就任することができない場合もあります。
相続税の申告・納付は相続の開始から10か月以内にしなければならないため、相続が発生してから成年後見人を付ける手続きを始めては、相続税の申告期限までに遺産分割協議をまとめられないことも考えられますので、注意が必要です。
当事務所では、相続が発生した際に、相続人のうちのどなたかが認知症等により遺産分割協議の当事者となれない場合にも、相続人の要望により後見人開始の審判の申立て手続の代理や、後見人への就任を行っております。
2.任意後見制度
成年後見制度は、ご本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」に至って初めて手続きをすることができます。そのため、通常は,認知症等の症状が始まってしまったご本人の意思ではなく、そのご家族の意思で成年後見人が選任されることになります。
すなわち、成年被後見人は、成年後見人を選ぶことができません。
もっとも、「自分が認知症等により正常な判断ができなくなったときに、自分が信頼する人に後見人になってもらいたい」というニーズも当然あります。
このようなニーズに対応することができるのが「任意後見制度」です。
任意後見制度は、ご本人の判断能力が正常なうちに、特定の人(ご本人が後見人となってくれることを望み、かつ、それを引き受けてくれる人)との間で、将来的に認知症などでご本人の判断能力が低下した際に、自分の後見人になってもらうことを委任する「任意後見契約」を締結することで利用することができます。
ただし、任意後見契約は、公正証書の形式にて締結しなければならず(任意後見契約に関する法律3条)、任意後見契約の内容(本人の氏名、任意後見受任者の氏名、代理権の範囲)は、公証人の嘱託により法務局で登記されることになります。
なお、任意後見契約は、ご本人の判断能力が正常なうちに締結するものですから、すぐには発効しません。ご本人が認知症等により精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況になった際に、本人、配偶者、四親等内の親族または任意後見受任者の請求により、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、任意後見受任者の業務が開始することになります。
3.保佐・補助制度
精神上の障害により事理を弁識する能力を「欠く」常況ではないものの、事理を弁識する能力が「著しく不十分」である場合には「保佐」の制度を、「不十分」である場合には「補助」の制度を利用することができます。
「保佐」の場合、保佐人は、被保佐人の次の行為について同意権を持ち、被保佐人は保佐人の同意がない限り、次の行為を有効に行うことができなくなります(民法13条1項)。また、次の行為以外にも、家庭裁判所の審判により保佐人の同意を要する行為を定めることができます(民法13条2項)。
① 元本を領収し、又は利用すること。
② 借財又は保証をすること。
③ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④ 訴訟行為をすること。
⑤ 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
⑥ 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧ 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨ 第602条に定める期間(短期賃貸借)を超える賃貸借をすること。
「補助」の場合、補助人等は、上記の①~⑨の中から補助人の同意を必要とする行為を選び、家庭裁判所に審判をしてもらうことになります。ただし、補助の開始も、同意を必要とする行為の選択も、本人(被補助人)以外が請求する場合には、本人(被補助人)の同意が必要となります(民法15条2項、17条2項)。
4.死後事務委任
死後事務委任とは、自らの死後の事務処理等について、ご家族に負担を負わせたくないであるとか、身寄りがないために死後の手続きを頼める人がいないという場合に、自らが健在のうちに、弁護士等の専門家にあらかじめ死後の事務の委任をしておくものです。
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