(マンション)管理業務主任者試験に合格しました&勉強法

 2021年12月5日に(マンション)管理業務主任者試験を受験し、2022年1月21日付けで合格していました。

 管理業務主任者とは、マンション管理における宅地建物取引主任者のような位置付けの資格であり、マンション管理業者が管理組合等に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行う際に必要な国家資格者です。

 2020年6月にマンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)が改正され、この改正法が2022年4月施行されますが、これにより、①マンション管理適正化推進計画制度、②管理計画認定制度が始まります。
 ①により、自治体がマンション管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項等を定める計画を作成するようになり(ただし、自治体の任意です。)、②により、マンション管理適正化推進計画を作成した地方公共団体が適切な管理計画を有するマンションを認定するようになります。
 国は、このような施策によってマンション管理水準の底上げと維持を図るとともに、適切なマンション管理が行われているマンションが認定・公表されることにより、マンションの価値の長期的な保全を図ろうとしています。

 また、自治体がマンション管理適正化推進計画を定めない場合においても、当該自治体に存するマンションにおいて適切なマンション管理が行われていることを認定することができるよう、一般社団法人マンション管理業協会(管理業務主任者試験の実施主体です。)によるマンション管理適正評価制度も開始されます。

 管理業務主任者とマンション管理士は、マンションの管理計画について、自治体による認定やマンション管理業協会による適正評価を受けられるようにするため、管理業務主任者は主にマンション管理業者の立場で、マンション管理士はマンション管理組合の立場で尽力することが求められています。

 このような事情を踏まえ、マンション管理について知ることは今後の弁護士業務においても有用であると考え、管理業務主任者試験を受験しました。

 以下では、管理業務主任者試験の出題内容や、勉強方法について書いていきます。

管理業務主任者試験の出題内容

 管理業務主任者試験では、大きく分けて、①管理業務の委託契約に関すること、②管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること、③建物および附属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること、④マンション管理適正化法に関すること、⑤その他管理事務の実施に関することが出題されます。

 勉強すべき範囲は非常に広く、法令関係では民法、区分所有法、マンション管理適正化法、建築基準法、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)、消防法、マンション標準管理規約(単棟型・団地型・複合用途型)、マンション標準管理委託契約書、長期修繕計画作成ガイドラインに加え、2021年度は、消費者契約法、借地借家法、景観法、動物愛護法、個人情報保護法、賃貸住宅管理業法、宅地建物取引業法(宅建業法)も選択肢として出題されました。

 これに加え、会計に関する問題が出るため簿記(勘定科目・仕分け)の知識が必要ですし、マンションの設備・修繕に関する問題が出るため構造・建築材料(コンクリート等)・防水・上下水道・排水通気設備・換気設備・電気ガス設備・消防設備等の知識も必要になります。

 正直、一朝一夕には覚えきることができない範囲の広さです。そのため、本来は、かなり長期的な計画を立てて勉強をするべきと思われます。

勉強の順序・方法

暗記から入ろう

 ある程度知っている情報の多い試験であれば、試験問題(過去問)を解くことから始め、分からなかったところについて埋めていく(テキストで確認・暗記していく)方法も有効と思われます。

 しかし、管理業務主任者試験のように、非常に広い範囲の多岐にわたる知識を満遍なく要するような試験の場合には、試験問題(過去問)から解き始めても、ほとんどを当てずっぽうでこなすだけで、勉強としての意味を成しません。

 そのため、管理業務主任者試験については、テキストの読み込み・暗記から入ることをお勧めします。

使用したテキスト・問題集

 今回は、「出る順 管理業務主任者・マンション管理士 合格テキスト」と「出る順 管理業務主任者 分野別問題集」(東京リーガルマインド(LEC))を使用しました。

 管理業務主任者とマンション管理士は、管理業者側とマンション管理組合側と立場は違いますが、同じマンションを取り扱う国家資格であるため、勉強すべき範囲として多くの部分が共通しています。

 また、管理業務主任者試験合格者はマンション管理士試験でマンション管理適正化法に関する問題5問について免除、反対に、マンション管理士試験合格者は管理業務主任者試験で同法に関する問題5問について免除を受けることができるようになっていますので、両方について一遍に勉強しておくのが効率が良いと思われます。

 そのため、今回は上記の両資格の勉強ができるテキストを使用しました。

テキストの質

 LECは、以前は司法試験予備校として名を馳せた資格試験予備校ですから(今もやってはいますが…)、テキストの出来(読みやすさや情報の正確性)は及第点と思われました。

 もっとも、テキストを使用し、実際の問題を解いた感想としては、「このテキストで6~7割の知識は埋められる」というものでした。

 「出る順」とあるように、頻出事項についてはほぼ網羅されているように思いますが、法令のうち宅建業法、品確法に関する記載は薄く、2021年度に出題され、今後も出題があると予想される消費者契約法、借地借家法、賃貸住宅管理業法については記載がありませんでした(景観法や動物愛護法は捨て問と考えてよいと思います。)。

 また、上記のとおり、マンション管理適正化法(及びマンション建て替え円滑化法)の改正があったことを踏まえれば、これらの法令についてはより詳しい記載があるのが望ましいように感じました。

 さらに、設備や建築材料(検査・修繕方法)に関する記載が、過去問にあるようなものでも欠けていることが少なからずありました。

 そのため、設備や建築材料(検査・修繕方法)については、このテキストだけでは少し足りず、他のテキスト(やネット上のマンション設備・検査・修繕に関する情報)から知識を得る必要がありました。

問題集の注意点

 問題集については、過去問を分野別にまとめたものであるため特筆すべき点はありません。

 もっとも、一点注意すべきは、表紙に「計10年分・500問を完全網羅!」と書かれていますが、本書に最初から入っているのは「直近過去8年分・400問」しかありません。残りの2年分・100問を手に入れるためには、本書に同封されたハガキで資料請求をしなければなりません(悪く言えば、LECに個人情報を渡さざるを得ない、ということです。)。

 そのため、予備校に個人情報を渡したくないな、と言う方は直近過去8年分の400問であることを前提に購入する必要がありますし、また、私のように試験日近くになって問題集を購入すると、そもそも資料請求可能期限を経過してしまっている、ということもありますので、この点はご注意ください。

その他の注意点

 マンション管理にかかわる法令やガイドライン(指針)は、昨今頻繁に改正されていますので、必ず最新のテキスト・問題集を用いるようにしましょう(問題集も、解説が古いと間違った知識を得てしまう原因になります。)。

勉強法(図示の重要性)

 勉強法の基本は、「FP2級に合格しました&合格のための勉強法」に記載したように、①テキストと問題を何度も往復する、②テキスト内の記載を自分の言葉に変換するの2つです。

 特に、今回用いたテキストは、上記のとおり、必要な知識の6~7割程度しか網羅していないため、残りの3割程度を補充する必要があります。

 また、マンション管理に関しては、いろいろな数字・期間を覚える必要があるため、これをイメージするための図示(自ら図を描いたり、既存の図に数字を書き込むこと)が非常に重要だと思います。

 例えば、「マンション建替制度」では…

マンション建替決議のために「招集通知を2か月前に」発しなければならず、「会日の1か月前までに」説明会を開催しなければならず、「区分所有者及び議決権の各5分の4以上の議決」で建替決議がなされた後は、集会を招集した者は「遅滞なく」建替決議に参加しなかった区分所有者に対し、建替えに参加するか否かを書面で催告しなければならず、当該区分所有者はその回答を「2か月以内」にしなければならず、建替決議の賛成者等は、その回答期間満了の日から「2か月以内」に参加しない旨を回答した区分所有者に対し区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。そして、その後、マンション建替合意者は、マンション建替組合を「5人以上共同して」「建替合意者及び議決権の各4分の3以上の同意」を得る等して設立し、建替後のマンションの敷地の自治体にて「事業計画を2週間縦覧に供しなければならず」、当該敷地に権利を有する者は、縦覧満了の日の「翌日から2週間を経過する日まで」に意見書を提出することができ、その期間を経過後に自治体の長がマンション建替組合の設立を認可した場合には、それを公告する必要があり、マンション建替組合は、「認可の公告の日から2か月以内」に建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができます。

 このように、似たような数字と期間がたくさん出てくるため、文章で覚えようとしても非常に困難です。

 そのため、期間の軸や組織・決議要件の軸を設けて、マンション建替決議からマンション建替組合の設立認可(及び売渡請求)までを図にすることが重要になります。

 なお、「出る順 管理業務主任者・マンション管理士 合格テキスト」の中にも図と表が沢山載っているのですが、何故か「ブツ切り」で、同じ流れの中に位置すべき項目がバラバラの図になっているケースが散見されます(これは結構学習効率を悪くしていたと思います。)。

 したがって、テキスト内の図や表を利用しつつも、自分でその後の流れや数字を書き加えていくことが不可欠と考えます。

今後のこと

 管理業務主任者登録はしない予定ですが(そのため、資格一覧に管理業務主任者を載せることはできません。)、研修までは受けようと考えています。

 また、管理業務主任者、マンション管理士に加え、宅地建物取引主任者、賃貸不動産経営管理士も(勉強内容も)相互に密接に関連するため、時間が許す限り、これらの勉強も進めてみたいと思います。