宅建士・賃管士・マンション管理士の各資格試験に合格しました。

 2022年10月16日に行われた宅地建物取引士資格試験、11月20日に行われた賃貸不動産経営管理士資格試験、同月27日に行われたマンション管理士資格試験を受験し、無事にいずれも合格することができました。

 昨年度に合格した管理業務主任者と合わせて、これで不動産関係の4つの資格を取得することができました。

 勉強時間については厳密にはカウントしていませんが、各試験の出題範囲で重複する知識を利用できることもあり、宅建に2か月弱、宅建試験後に賃管に延べ2週間、マンション管理士に延べ1か月程度、といったところでした。

    宅地建物取引士(宅建士)とは?

     宅地建物取引士(宅建士)は、宅地建物取引業者が、その業者に従事する従業員5人あたり1人以上の割合で設置することが義務付けられている資格者です。

     宅地建物取引業者が行う宅地建物の売買・交換や、宅地建物の売買・交換・賃借の代理・媒介を行う際に必要となる重要事項説明(宅地建物の客観的な状況や取引に伴う金銭の授受に関する情報、周辺環境、建築の可否等の法令上の制限に関する情報等の説明)については、宅建士でないと行うことができないことになっています(宅建業法35条)。

     皆さんもアパートやマンションを借りる際や、自宅を購入する際に、写真入りの宅地建物取引士証を見せられた上で説明を受けたことがあるかと思いますが、あの業務を行うことができるのが宅建士です。

     宅建士として重要事項説明等を行うためには、宅地建物取引士証の交付を受ける必要があります。
     私は宅建士としての業務を行う予定は当面ないのですが、5年毎の取引士証の更新のための法定講習を勉強の機会と考えて交付を受けることも検討しています。そのため、取り敢えず、宅建士としての登録だけを済ませておく予定です。

     なお、宅建士としての登録をするためには、①原則として、宅地建物取引業者での2年以上の実務経験が必要となりますが、私にはその実務経験はありません。そのため、②登録実務講習という講習を受け、修了試験に合格することで登録をすることができるようになります。

    賃貸不動産経営管理士(賃管士)とは?

     賃貸不動産経営管理士(賃管士)は、令和2年までは民間資格でしたが、令和3年から国家資格化された資格です。そして、賃貸住宅の管理業務を受託する業者は、その管理する住宅が200戸以上となる場合には、その営業所(事務所)ごとに1名以上の「業務管理者」を設置しなければならなくなりました。この「業務管理者」となれるのが賃管士です。

     もっとも、この「業務管理者」の設置義務は、令和3年6月から開始されたものであるため、現在は、宅建士のうち一定の講習を受けた者も「業務管理者」となることができることとなっています。そのため、現時点では賃管士には独占業務はないのですが、国家資格化後の合格者が増加すれば、いずれは「業務管理者」や賃貸住宅オーナーとの管理受託契約締結前に行われる重要事項説明等の業務は賃管士の独占業務となると予想されています。

     賃管士として登録するためにも、①原則として、賃貸住宅管理業者での2年以上での実務経験が必要となります。私にはその実務経験がありませんので、賃管士として登録するためにも登録実務講習を受ける必要があります。

    マンション管理士とは?

     マンション管理士は、マンションの管理について、マンション管理組合や区分所有者(マンションの各戸の所有者)からの相談に応じ、助言・指導・その他の援助を行うことができる国家資格です(これと対になるのが管理組合から管理を受託するマンション管理業者の中で管理のプロとして業務を行う管理業務主任者です。)。

     マンション管理士は「名称独占資格」=「マンション管理士と名乗れるのは試験に合格してマンション管理士として登録した者だけ」という資格です。そのため、「マンション管理士」と名乗らずにマンション管理に関するコンサルティング等を行うこと自体は違法ではなく、その意味でマンション管理士に独占業務はありません。

     もっとも、令和4年4月から地方公共団体によるマンションの「管理計画認定制度」が開始されたことに伴い、この地方公共団体に対する認定の申請前に、マンション管理士が申請内容を事前確認して申請手続きを円滑化するサービス(管理計画認定手続支援サービス)が開始されました。

     このサービスにおいて事前確認をすることができるのは、一定の講習を受けたマンション管理士だけですので、この点に限っては「独占業務」を得たとも言われています。

     このように、現状は独占業務が(ほぼ)ないことを踏まえると、「マンション管理士なんて資格とっても意味ないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、マンション管理(区分所有法等の関連法令と管理規約の運用及び管理業務自体)は非常に奥が深く、何らの勉強もせずに一朝一夕にコンサルティングを行うことは事実上不可能と思われます。

     その意味で、「マンション管理士」の名称を冠してマンション管理に関するコンサルティング業務等を行っている方については、その名称を冠することができないコンサルティング業者と比較して、確実にマンション管理について詳しく、相談の甲斐のある資格者であると言えます。

     マンション管理士については、登録に実務要件はありませんので、書類が届き次第登録手続きをする予定です。

    勉強に使用したテキスト等

     勉強方法については、これまでの以下の記事にも記載したとおりですので、以下をご覧いただき、ここでは各資格試験の勉強のために用いたテキスト等を紹介します。

    FP2級に合格しました&合格のための勉強法
    (マンション)管理業務主任者試験に合格しました&勉強法

    宅建試験の勉強に使用したテキスト

     宅建士の勉強については、知らないことも多くあるため、まずは基本的な部分を全体的に目を通したいと考え、「宅建士 合格のトリセツ 基本テキスト」「宅建士 合格のトリセツ 基本問題集」(いずれも東京リーガルマインド(LEC))を使用しました。

    「合格のトリセツ」の良い点

     「宅建士 合格のトリセツ 基本テキスト」は、非常に平易な記述で、宅建試験に必要な最低限の知識を簡潔かつ網羅的に記載してあるテキストで、法律関係の資格の勉強に馴染みがない方でも取っ付き易いテキストだと思います。また、勉強時間を確保することが難しい社会人の方が全体を浚うのにも適したテキストだと思います。

    「合格のトリセツ」の欠点

     他方で、平易な記述であるが故に、その記述の根拠を辿るための情報(条文番号等)がほとんど記載されていません。

     宅建試験(その他の不動産系資格試験も同様ですが)は、非常に細かい知識や細かい文言の差し替えで正誤を判断させる選択肢を出す傾向があるため、そういった選択肢で間違いを少なくするためには、テキストの記述の根拠に当たることが不可欠です。そのため、「合格のトリセツ」ではその根拠に当たることが難しく(当然不可能ではありませんが、面倒なのです。)、この点が「合格のトリセツ」の一番の欠点だと思います。

    「合格のトリセツ」の欠点の補完

     「合格のトリセツ」を出版している東京リーガルマインドは、「合格のトリセツ」とは真逆の、超過密に情報を詰め込んだ「出る順宅建士合格テキスト」も出版しています。


     この「出る順宅建士合格テキスト」には、宅建試験の合格に必要となる情報が全て詰まっていると言っても過言ではないのですが、その分、非常に分量が多く、忙しい方が全て読むのには全く向いていません。

     そのため、この「出る順宅建士合格テキスト」は、「合格のトリセツ」のサブテキストとして、「合格のトリセツ」に欠けている「記述の根拠」にあたるためのテキストとして利用するのが効率的だと思います。

     私は、普段触れることの少ない「宅建業法」と「法令上の制限・税・その他」について、「合格のトリセツ」の補完として「出る順宅建士合格テキスト」を利用しました。

    テキスト一周後の勉強に利用したもの

     「合格のトリセツ 基本テキスト」を1周した後、上記の「合格のトリセツ 基本問題集」を1周しました。

     その上で、隙間時間に問題演習を繰り返して知識を定着させるために、「合格のトリセツ 頻出一問一答式過去問題集」を利用しました。


     この問題集を利用したのは、「合格のトリセツ」シリーズであるから、というよりも、この問題集を購入すると、スマホ学習用の問題集(アプリ自体はフリーのもので、中身の問題集をダウンロードできるもの)を利用できるからです。

     4肢択一式の問題を解く場合、スマホの画面内で問題を読んで解いて解説を読むというのは非常にやりづらいのですが、一問一答式の問題・解説を繰り返しやる場合には、スマホの画面内で十分にできます。そして、書籍は大きいので持ち歩くのも開くのも億劫になりますが、スマホでできれば移動時間でも、お風呂時間でも、食事のお供にもいつでも問題を解くことができます。

     そのため、一問一答式問題集は、スマホでできるものを強くお勧めします。

     そして、一問一答式問題集を繰り返し解いていると、段々と答えを覚えてきてしまうため、最後の直前期に「出る順宅建士 当たる!直前予想模試」を利用して問題集にない知識の再確認を行いました。


    賃管試験の勉強に使用したテキスト

     賃管士の勉強には、民間資格時代に定評のあった「みんなが欲しかった!賃貸不動産経営管理士の教科書」(2023年版は「みんなが欲しかった!賃貸不動産経営管理士 合格へのはじめの一歩」)と「みんなが欲しかった!賃貸不動産経営管理士の過去問題集」(いずれもTAC出版)を利用しました。

    「みんなが欲しかった!」の良い点

     このテキストも、宅建士の「合格のトリセツ」と同様、必要な最低限の知識を簡潔かつ網羅的に記載してあるテキストで、法律関係の資格の勉強に馴染みがない方でも取っ付き易いテキストだと思いますし、勉強時間を確保することが難しい社会人の方が全体を浚うのにも適したテキストだと思います。

    「みんなが欲しかった!」の欠点

     欠点も宅建士の「合格のトリセツ」と同じく、記述の根拠を辿るための情報(条文番号等)がほとんど記載されていません。

     また、賃管試験は国家資格化して2回目の試験でしたので、「国家資格の試験であればこんな問題は絶対に出ないだろう…」と思われる情報が多々含まれていたり(例えば、「とりあえず賃貸派」と「当然賃貸派」の違いとか…)、国家資格の試験であれば突いてくるであろう情報が欠けていたり(例えば、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に関する情報がない)といった欠点がありました。

    「みんなが欲しかった!」の欠点の補完

      上記の「みんなが欲しかった!」の欠点を補完するため、民間資格時代は「公式テキスト」とされていた「賃貸不動産管理の知識と実務」(大成出版社)を利用しました。


     このテキスト、1094ページ(厚さ5センチほど)もあり、中身はモノクロで活字ばかりであるため、ここから取り掛かるのは絶対に止めた方がよいと言ってよいです。

     しかし、その分、試験の回答に必要な情報が網羅されており、国家資格化した試験問題にも十分に対応できますので、今後受験を考えていらっしゃる方は、サブテキストとして準備しておくことをお勧めします。

    テキスト一周後の勉強に利用したもの

     テキストの一周後には、上記の「みんなが欲しかった!」過去問題集で問題演習を行い、最後に「本試験をあてるTAC直前予想模試 賃貸不動産経営管理士」(TAC出版)で知識の確認をしました。


    マンション管理士の勉強に使用したテキスト

     マンション管理士の勉強については、「らくらくわかる!マンション管理士速習テキスト」「マンション管理士 項目別過去8年問題集」(いずれもTAC出版)を利用しました。

     このテキストの著者である平柳将人氏は、「平柳塾」というマンション管理士等の資格試験のための講座を開講しており、非常に定評のある講師であることから、このテキストを選択しました。

    「らくらくわかる!」の良い点

     「らくらくわかる!」は、期待したとおり、これ1冊でマンション管理士試験に必要となる情報が網羅されています。設備関係の図も多く載っていますので、どんな設備なのかのイメージもつかみやすいと思います。

     また、カテゴリごとに確認問題(過去問の肢)がそれなりの数載っていますので、読み終わってから確認問題を解くことで知識の定着を図れるのもよい点だと思います。

     ただし、非常に分厚く1冊になっているテキストであるため、これまでに1度もマンション管理関係その他の不動産資格の勉強をしたことがない人にとっては、取っ付きにくいテキストとも思われます。

    「らくらくわかる!」の欠点

     上記のとおり、「らくらくわかる!」テキストには必要な情報が網羅されているのですが、その網羅の仕方がページ脇の小さなチェックポイントのような記載に多い=大きな文字の本文にはすべてが記載されていない、というのが欠点です。

     これによりどうなるかというと、本文を全部読んで確認問題に進んでも、「あれ?これ書いてなかったぞ…?」という問題があり、遡って確認するとページ脇のチェックポイントに書いてあった…ということが多々あり、ペースを乱されました。こういった遡りにより知識が定着する側面もあるかとは思いますが、勉強にはテンポとスピード感も重要ですから、そこを崩されるのが本書の難点だと思います。

     また、修繕関係の情報が文字情報ばかりであるため、イメージをつかみにくい、という欠点もありました(例えば、ピンネット工法について「ピンでモルタルをコンクリートへ固定し、ひび割れたモルタルをネット層で補強する」とだけ書かれていても、結局どういう工事をするのかよく分からないのです。)。

     この点は、もう少し工事中の写真の掲載があっても良いのではないかと思いました。

     さらに、このテキストは、情報量は多いものの、なんとなく「関連する情報に相互に飛びにくい」という印象を受けました。もっとも、この点は、マンション管理に関する知識自体が単棟マンション、複合用途型マンション、団地型マンションに分岐する上、その修繕や管理費・積立金の利用についても区分所有法と標準管理規約で分岐する等、統一的な理解を図ることが難しいという問題に起因しているとも思われます。

    「らくらくわかる!」の欠点の補完

     賃貸不動産経営管理士と同じように、マンション管理士についても「マンション管理の知識」という分厚い公式テキストがあります。


     このテキストも、「賃貸不動産管理の知識と実務」と同様にモノクロで文字ばかりであるため、通読するのには全く向いていないのですが、設備の図がしっかり載っており、イメージがつかみやすいという利点があります。これをサブテキストとして利用して、イメージの補完をしました。

     また、修繕工事については、YouTubeにいくつか工法の紹介動画が上がっているため、そういった動画を見てイメージをつかみました(例えば、ピンネット工法については以下の動画を見ました。)。

    テキスト一周後の勉強に利用したもの

     テキストの一周後には、「マンション管理士 項目別過去8年問題集」で問題演習を行い、最後に「ラストスパート マンション管理士直前予想模試」で知識確認を行った上、残りの隙間時間で「マンション管理士 出るとこ予想 合格るチェックシート」(いずれもTAC出版)を利用して知識の定着を図りました。

    最後に

     今回受験した宅建士、賃管士、マンション管理士の各試験は、冒頭に記載しましたとおり、出題範囲が重複しており、1つの試験の勉強が他の試験の勉強に直接有効に影響します。

     また、試験日が10月中旬から11月末まで(管理業務主任者を入れると12月頭まで)に集中していますから、知識を忘れることなく利用することができます。

     そのため、今後これらの資格取得を目指す方には、宅建士を中心に据えて(宅建の知識が他の資格全てと重複しています。)、その他の資格取得を目指すという方針を取ることをお勧めします。

    投稿者プロフィール

    弁護士 渡邊涼平
    弁護士 渡邊涼平
    (仙台弁護士会所属)